gnav
Vol.01

profile

■中井庸友(映画監督・演出家)
1972年生まれ 東京都出 18歳で監督デビュー。
その後映画監督林海象氏と出会い、永瀬正敏主演映画「私立探偵濱マイクシリーズ」3部作の制作に携わる。現在は映画を中心にCM、PV、舞台演出を幅広く活躍。当劇団の主宰でもある。
長編映画デビュー作となる「ハブと拳骨」が日本人監督唯一2007年東京国際映画祭コンペティション部門のノミネート作品となり注目を集める。2009年には2作目の長編映画「カフーを待ちわびて」が公開。舞台では2010年に「ら抜きの殺意」2011年「兄帰る」2012年に「ハイライフ」「ぬけがら」を演出、何れも好評を博す。」
2013年2月9日からは中井庸友監督作品「ネオ・ウルトラQ」がWOWOWにて放送。

海と日傘(第40回岸田戯曲賞受賞作品)

星降る島記念すべき第一回目は、劇場ウッディシアター中目黒にて公演中(2013年6月26日(水)~6月30日(日))の海と日傘(第40回岸田戯曲賞受賞作品)の舞台監督である中井庸友(映画監督・演出家)にお話を伺いました。

―― 中井庸友さんにとっての、喧噪と静寂の狭間の時間とは何ですか?

インタビューvol.1中井庸友写真01一見それは相反するものに見えます。
もちろん言葉の意味としては間逆でもあります。しかし、その両者は見事に両立しているとも考えます。むしろ共生している。共存共栄しているというのか。それらは相反であるにも関わらず、まるで一対の事象の様にも感じます。そう、まるで夫婦のように。

例えば、庭先で子供たちが遊んでいる。そこには子供の声や、木々のざわめき、街の中の雑多な音、そこに喧騒がありますよね。だけれども、その喧騒の中にある縁側に子供たちの飲みかけの、カルピスが置いてあったとしましょうか。縁側に置かれた「飲みかけのカルピス」の周りには、静寂が宿っています。想像してみてください。誰しもが想像するに難くない風景と音です。子供たちの高らかな声、木々のざわめき、虫の音、静かに流れて来る風。その中にポツリと置かれたカルピスのグラス。遊びに夢中の子供たち。そっちのけで置かれたままのそれ。

見事に同居していると思う事があります。喧騒と静寂には狭間は無いのかもしれません。何と言うか、見事にお互いの隙間を埋め合っているのではないでしょうか。相反するものがぴったりとハマり、そこに調和が生まれている。

質問の答えとしては「日常」ですかね。つまり普遍的な日常(笑)

―― 江戸間十畳の今回の舞台演出に関するテーマ、想いとは?

インタビューvol.1中井庸友写真01うちの劇団には特定の作家がいません。上演するものは主に戯曲です。戯曲を選ぶ際に、大前提として「作家の想い」を感じとり、それを形にすることだと思っています。戯曲に対しての解釈を造形化する事が演出家の仕事であると。難しく言えば、僕の演出は重層的な劇構造になります。彼岸と此岸、夢か現か。そして、それらが相まって舞台上で俳優が輝けること。

もちろん作品を構築して劇を創るのですが、今回に限らず僕の演出に関するテーマや想いというのは、、、、、
やはり、最終的には俳優が輝き、ご観劇頂いて、同じ時間を共有したお客様の心が震える事が一番の想いでありテーマです。

それが、やりたいんです。おこがましいかもしれませんが、表現者として一番やってよかったと思える所はそこですから。

―― 舞台の面白さはどんなところですか?

インタビューvol.1中井庸友写真01面白みとしてはどこまで、僕の解釈や作家の思想なり思考なりを具象化し、それを俳優が体現できるか。そこに尽きます。そこには、演出という仕事によって一つの戯曲がここまでのモノになるのだという思いがあります。

魂を宿したい。エネルギーというか。もちろん生であることも舞台の面白みではあるのですが、そういう事も含めてお客様は笑ったり、泣いたり2時間くらいの時間の中で登場人物の人生を真っ向から受け止る。忙しいです、演劇は。

そして、どんな戯曲にせよ稽古場には笑いがいつもあります。もちろん作品の中にもですが。落語も喜劇も好きですから。問題も沢山起きます。ひっきりなしに。でも皆で乗り越えて行く。ありきたりな言い方になりますが、一体感があるとういう事に幸せを感じます。

創作の苦しさも、日々の笑いも、お客様へお届けした時の喜びも。全てひっくるめて「面白い」

―― 役者への思いを聞かせてください。

役者は大変でしょう。特にうちの劇団員はすぐに答えを欲しがる(笑)
答えを渡しても、解答の「答」だけですから結局分からないんです。「解」がないと「解答」にならない。そして表現には「絶対正解」がないので(笑)待ちます。俳優が苦しんで答えを持ってきてくれるのを。ただ、最終的に彼らが輝いて欲しいと願っています。僕の「演出」を体張って体現してくれるのは彼らですから。

―― 10数年ぶりに共演した音楽家Minに対する、演出家中井庸友の思いは?

インタビューvol.1中井庸友写真01""MINとは長い付き合いですね。恋愛信号の時からPV撮ったり、公私ともに若い時代を共にした戦友でしょうか。言い過ぎかもしれませんが(笑)僕も、彼も若いころは結構尖っていましたから。

改めてMINについて思いを伝えようとすると少し気恥ずかしいです。僕が舞台演出を始めてからも何度か名前は出ていて、やっと一緒に出来ると感慨深いものがあります。
僕らには、長い付き合いという「過去」がありますが「今」共に出来ている事を大切にしていきたいですね。そして、これからも。宜しく、MIN。今回の素晴らしい楽曲に感謝。

―― 映画や舞台を通して、何を伝えていきたいですか?

インタビューvol.1中井庸友写真01上記の質問の中にそれなりに散りばめられているのですが。。どれも本当ですし、具体的に「愛」や「情」「感謝」「躍動」「人間」そして「憎」「嘲り」「猜疑」「嫉妬」・・・・・・・、列挙するとキリがありませんが、そのどれもが含まれていて尚且つもっと根本的な「普遍」と言いますか。「愛」を描くために「憎」が必要だったりもしますし、創った作品はもちろん賛否もあるでしょうし。映画も舞台も全ての観客が同じではありませんから。皆様それぞれ。
僕には宗教的な偏りも、政治的な偏りもなく、あらゆる事象のど真ん中でいたいと願っています。愛も憎しみも右も左も描けるようでいたい。もちろんそんな簡単ではないですし、僕自身迷ったり混乱したりすることもあります。監督だって演出家だって人間ですから(笑)僕自身が「表現」が好きだ、という事です。

「普遍」をテーマにしながら、日常を描きたい。日常程劇的なものはないでしょう。 言うなれば「喧騒と静寂の狭間」ですかね(笑)